盆休みもねェ週末もねェ…とかいって不安に任せて手を動かしていたらなんか少し余裕が出てきた気がする。
ていう2023年8月14日から20日の記録です。

終戦記念日

Sessionの切明千枝子さんのインタビューがすごかった。
もともと広島サミットにあわせて収録されたものらしいのだけど、オーラル・ヒストリーとしてアーカイブされるのはとても重要だと思う。

おそらくこういった話は、学生の頃に修学旅行で行った長崎でも聞いたというか、プログラムとして時間を設けて聞かされたような記憶があるのに全く覚えていない、のを思い出す。それはまあそれで仕方のないことだとも思うのだけど、それでもひとの何かを踏みにじっているような残酷な事をしているようでため息が出てしまう。

TBSラジオ「荻上チキ・Session」 - 【特集】まもなく終戦の日。戦時下や戦後の日常とは?

紙魚の手帖 GENESIS

これまでアンソロジーの単行本として発行されていた『GENESIS』が、『紙魚の手帖』に吸収されて、夏の特集号という形で続けていきますよという話らしい。前の単行本の雰囲気が好きだったりもしたので、素朴に残念に思うところもあるが、それでも場が継続するというのは良いことだと思うとして。

  • 『ときときチャンネル#6 【登録者数完全破壊してみた】』宮澤伊織
  • 『手のなかに花なんて』笹原千波
  • 『記憶人シィーの最後の記憶』柞刈湯葉
  • 『空中楼閣』熊倉献
  • 『ローラのオリジナル』円城塔

を読んだ。

笹原千波さんのは、つい先日読んだ前回の『GENESIS』に収録されていた『風になるにはまだ』の続編ではないけど、同じ世界設定の別の登場人物による別の角度からの話。描写される感覚は前作の方が好みではあったものの、扱われる心情の機微のリアルさとか、手探りでコミュニケーションを諦めずに誰かをわかろうとする登場人物のあり方に通底して感動させられるものがあると思う。

『ローラのオリジナル』は何の話だと思ったら、 画像生成AIの追加学習モデルのLoRAのことだった。個人的にもすごくタイムリーな分野で、StableDiffusionからはき出される大量の画像自体を見て感じることや、触っている内によくよく考えてみれば本来特に欲してもいないはずの性的な描写を生成する方向にプロンプトの内容がスライドしてしまう事への後ろめたさやもはや何も感じなさがすごくリンクする気がする。
ただ生成AIを通して見える風景について淡々と書いたものかと思いきや、Mastodonで鳥の王国さんがさらっと書いていた感想によると、これはイタリアの詩人ペトラルカの話らしい。と言ったところでペトラルカを知らない自分は「ハッそうだったんや!」なんて風になることも出来ず、つくづく無知で何もわかっていなくて損をしているのだなと思う。今度調べよう。

バービー

『ケンたちはどう生きるか』。

バービーの話と思いきや、同時にケンの話でもあった。というのは事前情報から想像していた通りではあったのだけど、ただ男女の関係性を反転させて「男もこういう立場になったら女性の置かれている状況がわかるだろう」とするみたいな話にとどまらず、属性にとらわれないで生きていく事についてふざけながらも真正面から説いていていい映画だった。

ライアン・ゴズリングのケンは完璧だし、ケンダムで行われる典型的男性の有害な振る舞いはゴッドファーザーのくだりを筆頭に思わず笑っちゃうんだけど、この映画自体に、観ている最中も何かしら過ぎっては何か言いたくなるようなモチーフやセリフが散りばめられているのも、いじわるすぎるくらい良く出来てると思う。
ちなみに自分は「スナイダー版ジャスティス・リーグが云々」というくだりでゲラゲラ笑ってしまったすぐ後で、それがトラップだった事に気づき、無事なんとも言えない気持ちに。

などなどポジティブなものを受け取れる作品だし、断片を切り取ってみればすごく笑っちゃうような場面ばかりなんだけど、1本の映像作品として観ると結構ガチャガチャしていて、そこまで好みではなかったのが正直なところだったりもする。

荒唐無稽を通り越し「こういうものだから」で済ませられてしまう、おもちゃならではな無理矢理さを利用しすぎている気がして、何が起きてもどうでもよくなっちゃうというか。
特にマテル社のシーンはリアルワールドなのにリアリティラインがよく分からず、テンション的にちょっとついて行けなくてつらかった。バービーランドとの境界であるからという事も、あそこを生々しくリアルに描いたらギャグとして成立しなくなっちゃうだろうというのもわかるのだけど。
こと日本においてはマテル社の上層部のジェンダーバランスとか笑えなかったりもするので、その辺の温度調整に難しさというのもあったかもしれない。

またフェミニズムというかジェンダー的な問題提起がなされているとは言えわりかし優しめで、だいたい想像通りといえば想像通りの範囲の話な上に、コメディとしてオブラートに包まれているのが逆に肩透かしでもあった。もっと男が身につまされすぎて凹みまくるようなものを身構えていた身からするともっと刺しに来て欲しかった。

まあ諸々いまの社会状況の中でコメディとして広く観られるためにはこのくらいがよいのではという判断なのかも知れないのだけども。

ただ、この先どんな困難があろうと自分の人生を引き受けていく事を決めた姿を端的に描いたラストシーンは文句なしに美しくて、冒頭の『2001年宇宙の旅』のギャグっぽいパロディに、バービー自身の変化というまた別の象徴的な意味が重なって、ああこれはまごうこと無きグレタ・ガーウィグの映画だったんだと気付かされる見事なエンディングだった。

その直後のエンドクレジットで、ニッキーミナージュとアイススパイスの”Barbie World”が設定おかしいのでは…ってくらい爆音で鳴り響いていてスクリーンが震えていたのも超よかった。

映画の後で観たBLACKHOLEの配信で、Utomaruさんのおもちゃとしてのバービーについての話も面白かった。

UFC292

スターリングとオマリーの試合は別にどっちもでいいけど流石にスターリングでしょ…と思っていたのに加えて、とりあえず真面目に観た1Rが堅い入りだったのもあって、2Rもまあガン見しなくても大丈夫かなって感じで、洗濯物をハンガーにかけたりしながらチラチラ見ていたら気づけばオマリーがスターリングの顎をぶち抜いていてちょっと驚いた。

言ってしまえばアルドを倒したマクレガーみたいな勝ち方で、流石にこいつは持っているなと思う他ないのだけど、別段憎たらしくもロマンも感じないのはなんなのか。とりあえず過去に負けてるヴェラと、なぜかすっ飛ばしたメラブとサンドヘーゲンあたりとさっさとやって欲しいなとは思います。

あとはギャリーの相変わらず圧倒しながら勝ち切れない感じとか、ヴェラもそこまで怖さが無くなってきたような気がするなとか。

よかった新譜


そのほか

  • クローネンバーグの新作『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』はわけわかんなかった。
  • 『The Cosmic Wheel Sisterhood』買ってちょっと遊んだ。